★なあ、お前ら自殺したいと考えた事ないか?
◎ねえよ 。
★何かこう、生きて行くのが虚しくなって、死んでしまいたくなる事ってないか?
◎ねえな 。
★考えてもみろよ、毎日毎日同じ時間に起きて、まずい飯を食って仕事して、仕事が終われば安酒でオダを上げてよ、そんでもって、家に帰ればエロ動画を子守唄に寝るだけの最低な生活だろうが?生きているだけ無駄なんじゃないかって思わないか普通?どうよお前等。
◎思わねえよ。
★自分自身が生きている意味が無い事くらい分かっているんだろう?生きようが死のうが全く何の意味も成さないのがお前らだ。正に存在自体が無意味。残念ながら死ぬしかないんだよ。
◎だけどよ、そのうち嫌でも死ななきゃならねえんだ。いまさらショートカットしたって、あんま意味はねえんじゃねえか、実際。それにな、まずは傀より始めよ、お前の死にざまを拝んでからでも遅くはねえな。
★よし、すぐ死ね。
◎まあ聞けよ、だいたい俺達が死んだら喜ぶ奴等が居るじゃねえか、まず其れが面白くねえわけよ。奴等を嬉しがらせるわけにゃいかねえな、ここは嫌がらせも兼ねて逆に数を増やしてやろうじゃねえか。
★ふん、分かっているみてえだな、其の通りよ。今さら言うまでもないがお前達は外れモンだ。世を拗ねたイジケもんで、世間の人様に比べて一段も二段も格下の存在だ。でもよ、其れはお前等の生き様だから誰にも文句を言われる筋合いはねえし、俺だってお前等に含む所は何もねえ。しかもお前等はそれ相応の苦労もあれば、犠牲も払ってる。
そんな卑しいお前等の事を何故か奴等は面白く思っていないんだな、これが。俺達にとっちゃあ、お前等は楽しい見世物に過ぎないし、時には笑いものにして憂さを晴らす都合の良い下層民風情だが、奴等にしたところで其の辺の事はよく分かっているはずなんだが、どうにも最近、お前等ごときに対する焦りと嫉妬、それに危機感も凄いんだよ。
井の中のでしか生きられない蛙共にとっちゃあ、壊れ者にしか見えないお前等が自分達より遥かに自由で、ずっと楽しそうなのが悔しくて堪んねえのかもな。
◎井の中ではない、肥溜めの中だ。それにしても自分自身の飼い主に対して随分と不遜ではないか。
★奴等が俺達の飼い主だからといって敬う必要がどこにある、ええ。金と地位に下らない名誉しか頭にない屑共じゃねえか。
ま、大体お前等は人様の作った地位や名誉とは関係のない存在だから、そこらへんの事にゃあ疎いし、まるっきり興味もないんだろうが、お前等のそういう生き様が奴等には我慢できねのかもな。
しかし思えば哀れな話よ、金と地位と名誉くれしか取り柄がないとはな。まあ俺にはそれすらないが。それによ、あいつ等は人様の施しで生きている連中じゃねえか。お情けで生かしてもらってやがる分際で、涙が出る程ありがたい其の施しをだ、税金だ貢物など抜かして当然の如くせしめやがって、全ては俺達の労働の成果だろうが。奴等が言うには其の遂行する業務、そして其の地位や名誉に相応しい報酬らしいが、どんな馬鹿だってそんな与太話を信じる奴はいねえわな。
奴等はいつの時代にも俺達から搔き集めた金でグロテスクな社会システムを構築しやがる。そして其のシステムを使って俺達を自主的な強制労働、つまりは志願制の奴隷制度だな、そいつに追い込んで自由自在に運用して生きてきた。
結局よ、金を払い続ける俺達が一番に馬鹿なんだよ。どうにかしようにも馬鹿の数が多すぎてどうにもならないんだよ。そしてな馬鹿の数が多すぎるってのもシステムの効用なんだよコン畜生めが、ド畜生めらが。
そんでもってよ、なんで俺達なんだ、本来なら果てしなく馬鹿で無能な筈のお前等が無様を晒すべきなのによ、逆に生き生きとして幸せそうなのが許せねえんだよ。訳が分かんねえんだよ、不思議なんだよ。お前等の役どころは俺達より馬鹿で貧乏で不幸になる事なんだ。それが出来ねえのなら死ねって言ってるんだよ。
◎地位や名誉とは肥溜めの中でしか通用しないものだ。奴等がデカい面して大威張りで生きていけるのは肥溜めの中だけなのだ。真面な人間は屎尿の中では生きていけぬ。
★社会に於いて自由は絶対的なモノでねえ、相対的なものだ。俺がこんなにも不幸せで進退不能を窮めているのは、奴等やお前等が自由を独り占めじているからじゃねえか。
◎我々は社会の中には居らず、社会に存する。先にお前が言った通りだ。人の死を望み、不幸を喜ぶ者は肥溜めの中にしか居ない。
★なるほど、幸福と同じ理屈か。
◎戯け奴が、幸福こそは絶対だ。絶対的ではなく絶対なのだ。世界に於ける誰かが幸福になれば俺達は幸福だし、俺達が幸福なら他の誰かも幸福なんだよ。
★しかし、現実に比較するモノがなければ幸福を実感できないのではないか、誰かが不幸であればあるほど、自分の境遇を幸福だと確信できる。
◎屑野郎め、最も下劣な自己満足と幸福を取り違えていやがる。お前達のような屑は年がら年中、朝から晩まで大声に法律や正義、義務を並べ立てて人々を使嗾する。浅ましくも常に自分の懐を肥やし、金持ちや権力者には無様に媚び諂い、貧乏で無力な者達に対しては驕り高ぶる事で無上の喜びを得ている。いずれ卑劣漢に相応しい最後を迎える事となるだろう。
★俺達はそういう人間である事を許されているし、社会や自分自身に選ばれているのだ。
◎お前達は、自分や社会が狂っているからこそ存在できる単なる愚か者にしか過ぎない。お前は狂った自分と狂った社会に作られ、システムによって自分や社会に選別された哀れな完成品なのだ。
★先に申した如く、ワシもそう思わなんだ訳ではないぞ。だがのう現在に於いてさえ、此れ程までに圧倒的な全世界的肯定を受け続けたシステムなのだ、いくらお前達から批判を受けようとも、システムとしての人々の信認を損なう未来は考えられない。だからこそ、此のワシという人物は現時点における人類にとっての最適解と断言するしかないのだ。
◎やはり肥溜めから抜けられはせぬか。それにしてもお前達は変わるという事ができない。奴隷制の時代にもシステムとしての最適解を言い続けて滅され、封建制の時代にも人類に於ける最適解を断言して滅びていった。今度は資本主義こそが最適解と宣伝を重ねているが、お前達の言う最適解とやらが、いつの時代にも自分達のための最適解であり続ける限り、お前達が未来人類の手によって常に滅ぼされ続けねばならぬ必然性こそが、この世界における最適解だと思い知る時が必ず来る。
★それならばなおのこと、残された時を思う存分に楽しみ尽くすとしよう。
◎いつの時代にも人々の実力には差があり、与えられた条件にも差が発生する。これは人間社会の必然であり、必然の現状と理想郷との乖離を如何様に為すべきか、理想郷の理想とは如何様にあるべきなのか、不断の判断を行い決断し実行を重ね続ける努力が社会の成員たるべき人間の使命であろう。まずは濁世の根源である社会的リソースの独占を見直し、正しく分配を行う事だ。
★バカバカしい。所有権の絶対に勝る理想郷なんぞ有ってたまるかい。
◎理想郷の為の所有権絶対ぞ、理想郷の為の捨て石なのだ。当たり前だが此の世界に絶対的貧困は存在できないし、同様に絶対的な富も存在できない。全て相対的なモノだ。当然ながら相対の世界は常に変転する。一瞬たりとも同じ姿を留めておくことはできない。つまり資本主義は勿論、全ての社会体制は最初から破綻しているのだ。我々が生まれたら必ず死ぬように、社会体制も必ず死に去ってしまう。そして人間が次から次へと生まれて来るように、社会体制も次から次へと生まれて来る。問題なのは死んだ社会体制にいつまでもしがみ付き、おぞましい腐臭を放ちながら、すでにゾンビと化した社会体制を抱き抱えながら生き続ける人々、ゾンビにたかるウジ虫と化した日本人だ。
★じゃかましいわい、あほんだら。いいか、人間ちゅうもんはなあ、いま自分が真食らってる握り飯をよ、「俺にはコイツを誰かにクレてやる自由があるんだ」ちゅう事をとっくりと分かっているヤツが本当の人間よ。そんでな、いつも意地汚くガブ呑みしてるドブロクをなあ、「俺はコイツを誰かにおごってやる自由があんだ、うれしいじゃねえか」そう思えるヤツが当たり前の人間よ。そしてその反対によ、人非人という奴はな、「これは俺が手に入れたもんだ、だからこのブツを独占する権利が俺にはある」そう考えるもんなんだ。
◎其の伝で行くとお前を含めて此の島国の全員が人非人という事になるが。
★当たり前田のクラッカーよ。いいか、資本に自由意思があって勝手に集合と離散を繰り返している訳じゃあねえんだ。全てのリソースの分配を行うのは社会じゃあねえ、意思のある資本家なんだからよ、だから資本主義なんだ。
だいたい言い方が悪いわ、資本主義じゃねえ資本家主義なんだ、どんな汚い方法でもいい、金を握って資本家になった奴に社会的リソースの分配は任せる、それが資本主義の本質なんだよ。分配を増やして欲しいんなら資本家のお情けにすがるんだな。
お前等のように新しい体制を以って平等なリソースの分配を図ろうという輩は死ぬしかないんだよ。
◎日本国に於ける全ての社会的リソースは日本国民全員のものであり、選挙で選ばれた議員に其の分配を委託する。基本六法に明記されておるのはどうした事か。
★だから憲法改正よ、法律だって殆ど作り替えたしな。それも、お前等のいう日本国民に選ばれた選良によってだ、それが現実なわけよ、素晴らしいのか、悲しいのか、バカバカしいのか、当たり前なのか分らんがな。
結局こうなってみると、確かにお前等の言う通り肥溜めだわな、いやもっとひどい、痰壺並みだな、間違いない、断言できる。
そしてこれも断言しておくが、俺達は此の肥溜めが好きなんだ、此の肥溜めでしか生きられないんだ。だからよ、肥溜めの外で生きられるお前等に、俺達の生き様をとやかく言われたくないわけよ。
◎嫌がらせや助言ではない、励ましているだけだ。
★本当にそう思っているなら、お前等かなり異常だわ。いや気違いだ。
[To Be Continued]